エピソード2 「悲しい星空」 立岩 広人
私の母は父が亡くなってから約20年間家族に心配をかけないようにと気丈に振る舞い、実家の能登半島輪島で独り暮らしをしていました。89歳の誕生会を家族でお祝いした1ケ月後、様子をみに行った妻が母の異変に気付き病院の救急外来につれていきました。そしてその10日後母は亡くなりました。悲しいのは母の呼吸が荒かったのが徐々にゆっくりとなり逝ってしまった瞬間だけであって、その後喪主となった私はいろんな方の指示で動くだけで悲しみをじっくりと感じる暇さえありませんでした。 葬儀は亡き母の生前からの意向で小さなお寺で身内だけの家族葬でした。そんな通夜の晩お参りに来てくれた最後の親戚をお寺の玄関まで見送って外に出てみると驚くほどの満天の星が輝いていました。 私の母は私の写真の1番のファンでした。輪島市で開催された美術展に出品すると必ず見に来てくれて、入賞などすると自分の事のように喜んでくれました。通夜の晩に少し不謹慎な気がしましたが母に捧げるために喪服から私服に着替え、お寺から少し離れた海岸へ綺麗な星空の写真を撮りに行きました。思う存分悲しい星空を撮ったあと再び母が眠るお寺へと戻りました。
(金沢星の会 70周年会報誌「COSMOS」掲載文) |